【キャリア】がむしゃらに働いてた頃より、“こなしてる今”のほうが安定している

キャリア

若い頃の私は、まさに「がむしゃら」という言葉がぴったりの人間でした。朝から晩まで働き詰め、仕事も責任も、まるで自分の存在意義を確認するかのように、抱えられるだけ抱え込んでいました。「全部引き受けて、必ずやりきってみせる!」──そんな熱い思いで日々を駆け抜けていたのです。しかし、今の私は、かつての自分とは全く異なる働き方をしています。むしろ、「どうすれば無駄な力を抜けるか」「いかにして効率よく、かつ心身に負担なく仕事を進めるか」ということに、頭を使うようになっています。この変化は、私の人生観、そして幸福感に大きな影響を与えました。

全力で駆け抜けた時期は、誇れる。でも、本当にしんどかった

あの頃の自分を振り返ると、確かに刺激的な日々でした。次々と押し寄せるタスクをこなし、困難なプロジェクトを成功させた時には、大きな達成感と高揚感を味わうこともできました。しかし、その裏側で、私は常にギリギリの状態で踏ん張っていました。

  • 仕事に生活が振り回される: プライベートの時間がほとんどなく、生活のすべてが仕事中心に回っていました。
  • 毎週のように体調を崩す: 精神的な疲労が蓄積し、週末は常に体調を崩して寝込む、といったことが当たり前になっていました。
  • 休みの日も「仕事モード」が抜けない: 会社にいない時でさえ、仕事のことが頭から離れず、完全にリラックスすることができませんでした。

今思えば、あの時期は「やりきった」というよりも、肉体的にも精神的にも「無理やりこなしていた」という表現の方が近いかもしれません。周囲から見れば「頑張っている人」だったかもしれませんが、自分自身は常に消耗していました。

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今は、“抑えて働く”という「静かな技術」を身につけた

現在の私の働き方は、かつてのような派手さはありません。オフィスで「成果出してます!」とアピールするようなこともなければ、注目を集めるような目立つ存在でもありません。しかし、やるべきことは着実にこなし、むしろ周囲からの信頼は以前よりも増したように感じています。

この変化をもたらしたのは、私が身につけた“抑えて働く”という「静かな技術」です。

  • 無駄に背負わない: 自分のキャパシティを正確に把握し、無理に責任を抱え込んだり、余計な仕事を引き受けたりしない。
  • 感情に振り回されない: ストレスの多い状況でも、冷静さを保ち、感情的に反応しない。
  • 常に“冷静な自分”を保つ: 状況を俯瞰し、一歩引いた視点から物事を判断する習慣を身につける。

かつてのような「戦っている感」や「追い込まれている感」は全くありませんが、それでも仕事は滞りなく、むしろ効率的に回っています。これは、無駄なエネルギーの消費を抑え、本当に集中すべき点にリソースを投入できるようになった証拠です。

「がんばらないこと」を“悪”としないようになった

昔の私は、「頑張っていない自分=怠けている」と、自分自身を厳しく評価していました。常にフルスロットルで走り続けることが、唯一の正義だと信じていたのです。しかし、今はその考え方が大きく変わりました。「頑張らないこと=省エネで賢い選択」だと捉えるようになったのです。

  • 長く続けることが大前提: 人生もキャリアもマラソンです。燃え尽きてしまっては元も子もありません。持続可能なペースを見つけることが、何よりも重要だと気づきました。
  • “がんばりどころ”と“抜きどころ”のバランス: 常に全力投球するのではなく、本当に力を入れるべき「がんばりどころ」と、意識的に力を抜く「抜きどころ」を見極めるバランス感覚を養いました。
  • 毎日を「適温」で過ごす: 心身ともに負担が少ない「適温」な状態で日々を過ごすことが、長期的に見ても最も生産的であり、体にも心にも優しい働き方であると理解しました。

この変化は、私の心に大きなゆとりをもたらしました。自分自身を不必要に追い込むことをやめ、ありのままの自分を受け入れられるようになったのです。

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“誰のために”じゃなく、“自分の納得のため”に働くようになった

かつて私ががむしゃらに働いていた時期の根底には、「誰かに認められたい」「昇進して社会的地位を確立したい」「周囲の役に立ちたい」といった、他者からの評価や期待が強くありました。それが、自分を奮い立たせる原動力になっていたのは確かです。

しかし、今は違います。私が仕事をする上での最大のモチベーションは、「自分が納得できるように、心を崩さずに働くこと」です。他人の評価や期待に応えることよりも、自分自身の心と身体が健やかであること、そして自分の仕事に心の底から納得できること。それだけで、もう十分に価値があると思えるようになりました。この変化は、外部からの承認に依存しない、内なる充実感へと繋がっています。

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おわりに:静かに働くことも、ちゃんと前に進む方法

もしかしたら、私の今の働き方は、周囲から見れば「本気じゃない」「もっとできるはずだ」と評価されるかもしれません。しかし、本気を出しすぎて心身を壊してしまうくらいなら、ほどほどで長く続けられる方が、はるかに大きな価値があると私は考えます。

あの「がむしゃら」に駆け抜けた時期があったからこそ、今の「静かな労働」のありがたさを、心から実感することができます。派手な成果を次々と生み出すわけではないかもしれません。しかし、心身の健康を保ちながら、着実に、そして揺らがずに物事を進めることができる。それこそが、私にとっての「ちゃんと働く」という、新しい定義になったのです。この「静かなる力」こそが、持続可能な幸福への鍵であると信じています。

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