子どもが産まれると、私たちの人生は、まるで新しい次元に突入したかのように、そのすべてがガラリと変わります。特に、その変化の波が最も大きく押し寄せ、そしてその重要性をこれほどまでに痛感させられるのが「睡眠」という、ごく当たり前だったはずの行為です。
幸せと引き換えに、失われるアレ:育児という名の「幸福な消耗戦」と睡眠のトレードオフ
今年の5月、僕たちの家庭に待望の息子が誕生しました。現在はありがたいことに育児休暇という貴重な期間を過ごしており、日中は息子の愛らしい寝顔を眺めたり、おむつを替えたり、ミルクをあげたりと、目まぐるしくも幸福な日々を送っています。その合間を縫って、このブログの執筆を続けることができているのも、育休という時間の恩恵です。
しかし、この育休期間中に、僕は一つの厳然たる事実に直面し、それを痛感することになりました。それは、圧倒的な「幸せ」と引き換えに、時には「睡眠」が大きく削られるという現実です。子どもの無垢な寝顔を見ているだけで心が満たされ、この上ない幸福感に包まれる一方で、夜中に何度も起こされ、細切れになる睡眠。この二つが、ときにトレードオフの関係になり、まるで「幸福な消耗戦」のような日々が続くのだと、身をもって知ったのです。
かつて高校中退という経験から、大学で猛勉強し、大企業で激務に追われていた頃も、睡眠不足は日常茶飯事でした。しかし、それは自分の選択であり、ある程度のコントロールが可能でした。育児における睡眠不足は、自分の意志ではどうにもならない部分が多く、その点でこれまでの人生で経験したどんな疲労とも異なる質のものでした。
寝不足は、すべてを台無しにする:昼寝という「戦略的休憩」の絶大な効果
僕は、もともと睡眠時間が削られると、途端に心身のパフォーマンスが著しく低下するタイプです。具体的には、些細なことでイライラしやすくなり、物事を多角的に見ることができず視野が狭まり、仕事や日常生活における集中力もガタ落ちします。仕事であれば、ケアレスミスの連発や効率の著しい低下に直結しますし、育児においても、穏やかさを失ってしまい、子どもや妻に対して不必要なストレスを与えてしまう原因になりかねません。これは、僕が健康を「最強の資産」と考える上で、最も避けたい状態であり、人生の「利益率」を著しく低下させる要因だと認識しています。
だからこそ、僕は「昼寝で睡眠を補う」という、一見単純ながらも非常に効果的な戦略を徹底しています。深夜の授乳で目覚め、早朝のぐずり声に反応する日々。一日の睡眠リズムは完全にバラバラになり、まとまった睡眠を取ることは困難です。しかし、そのぶん、昼間に息子が寝ている隙を見つけて、たとえ30分という短い時間でも横になるようにしています。この短い昼寝が、僕の精神の均衡を保ち、その日のコンディションを立て直す上で、どれほど重要か計り知れません。日中にしっかりと休むことで、心身の疲労をリセットし、夜の育児や、その合間のブログ執筆といった活動にも対応できる体力を温存できるのです。
この「戦略的休憩」は、僕が「焦らず、心配せず動き続ける」というライフスタイルを実践する上で、欠かせない要素となっています。無理をして心身を壊すのではなく、賢く休息を取り入れながら、持続可能な形で活動を続ける。それが、育児期間という特殊なフェーズにおける、僕なりの最適解なのです。


睡眠は夫婦関係の潤滑油:穏やかな家庭を築くための不可欠な要素
これは、多くのパパ・ママが経験する、そして見過ごされがちな、しかし非常に重要な話かもしれません。睡眠が十分に確保できていないと、人は精神的に不安定になりやすく、つい余計な一言を口にしてしまったり、些細なことで感情的になったりしてしまいます。例えば、こんな日常のワンシーン。
妻:「ねえ、おむつ替えた?」 僕:「さっきやったよ!(←寝不足で、つい語尾がキレ気味に)」
この、本来なら何でもないはずのやりとりが、寝不足ゆえのイライラや疲労から、無用な地雷となり、夫婦間の小さな溝を作ってしまうことがあります。積み重なれば、大きな亀裂に発展しかねません。しかし、自分がしっかりと寝ていれば、同じ問いかけにも「ああ、さっき替えたよ、ありがとう」と、穏やかに、そして感謝の気持ちを込めて返せるのです。
眠れている僕は、心に余裕があり、優しく、そして冷静な判断ができる僕。それは、夫婦関係を円滑にするための、かけがえのない潤滑油になっていると実感しています。僕が「完璧な子育ては必要ない」と考える上で、夫婦間の良好な関係は最も大切な土台であり、子どもの健やかな成長にとっても不可欠な環境だからです。睡眠は、単なる個人の休息ではなく、家族全体の幸福度を高めるための、重要な投資なのです。
幸せのなかで、どう自分を保つか:削らない、という人生の優先順位
育児は、間違いなく人生で最も大きな幸せの一つです。息子の笑顔や成長を間近で見られる喜びは、何物にも代えがたいものです。しかし、その圧倒的な幸せをきちんと味わい、日々の育児に前向きに取り組むためには、意外と多くの体力と精神力が必要だと感じています。精神的にも肉体的にも消耗することが少なくありません。
だから僕は、息子が寝たら、迷わず自分も寝るというルールを徹底しています。もちろん、やりたいことは山ほどあります。このブログの記事も書きたいし、資産形成のための積み立ても継続したい。読みたい本も、見たい映画もたくさんあります。しかし、それらの優先順位の最上位に「睡眠」を置いています。睡眠だけは、どんなに状況が許しても、決して削らない。この決断は、僕が「焦らず、心配せず動き続ける」という、持続可能な生き方を選ぶ上での、重要な基盤となっています。
これは、単なる「休息」というよりは、未来の自分への「投資」に近い感覚です。十分な睡眠を取ることで、日中のパフォーマンスが向上し、限られた時間でより質の高い作業ができる。そして何よりも、心穏やかに育児に向き合える。これこそが、僕が「幸福と成功はトレードオフではない」と考える上で、最も重要な要素なのです。


最後に:眠る父は、最強だ。そして、その先の未来へ
息子が僕に与えてくれる幸せは、計り知れません。そのかけがえのない幸せを、イライラしたり、疲労困憊で味わえなかったりすることなく、きちんと噛み締めたい。そして、この育児期間という貴重な時間を、単なる「耐える時期」ではなく、自己成長と家族の絆を深める「豊かな時期」として過ごしたいと願っています。
そのために、今日も僕は、昼寝を決め込みます。 眠れている父は、心に余裕があり、穏やかで、優しく、そして、どんな困難にも立ち向かえる最も強い存在だと信じています。
この育休期間は、僕にとって「人生の棚卸し」をする貴重な機会でもあります。睡眠を最優先することで得られる精神的な安定は、これまでのキャリアやこれからの「窓際FIRE」への道を考える上で、不可欠な土台となっています。
未来の自分が、今日の僕の選択に感謝する日が来ることを信じて。

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