もし、私が人生をRPGに例えるなら、これまでの僕のキャリアは、それはもう見事なまでに「迷走」でした。
「やりがい」という名のレアアイテムを求めて、無謀なダンジョンに何度も突入し、そのたびにボロボロになっては、なんとか生還する。そんな、ちょっとタフだけど、どこか危なっかしい冒険者でした。
かつての僕も、世間の「仕事はやりがいが一番!」という風潮を、疑うことなく信じていました。残業続きでも、心の中で「きっとこの先に、感動のエンディングが待っているはずだ」と、自分を鼓舞していたものです。
しかし、パワハラや激務で心を壊しかけたとき、僕はふと立ち止まりました。そして、気づいたのです。本当に大切なのは、派手な「やりがい」ではなく、心穏やかに過ごせる「安心」という、地味だけれど揺るがない土台なのだと。
この記事では、そんな僕が、なぜ「やりがい」というキラキラした言葉を手放し、「安心」という静かな価値観を選ぶようになったのか、これまでの道のりをお話ししたいと思います。
1. 「やりがい」という名の呪文にかけられて
高校中退から遠回りをして、ようやくたどり着いた通信系の大企業。当時の僕は、ようやく社会のレールに乗れたという安堵と、「これからバリバリ働いて、社会に貢献するぞ!」という、少々前のめりな気合いで満ち溢れていました。
しかし、現実はまるで、RPGの序盤でいきなりラスボスと遭遇するような理不尽さでした。尊敬できない上司からのパワハラ、そして、プロジェクトメンバーの死という、あまりにも重い現実。僕の「やりがい」を探す旅は、始まる前に終わりを告げました。
この時、僕は「やりがい」という言葉が持つ、もう一つの顔に気づかされました。それは、「やりがい」を口実に、労働者に過剰な負担を強いる、まるで魔法の呪文のような側面です。
「やりがいがあるから、残業も苦にならないだろう?」 「このプロジェクトに『やりがい』を感じるなら、多少の無理は当然だ」
僕たちは、いつの間にかこの呪文にかけられ、自分の心と体の声を無視するようになっていたのです。
2. 心の「かいふくまほう」としての「安心」
心を病み、適応障害と診断された時、僕の心はもう限界でした。
毎日、「辞めたい」という気持ちが頭の中を渦巻く。しかし、「辞めたらどうなる?」という恐怖が、僕をその場所に縛り付けていました。
この経験から、僕は心を守るために最も大切なのは、「やりがい」や「スキル」よりも、まずは「安心」なのだと悟りました。そして、その「安心」を手に入れるために、僕は2つの「かいふくまほう」を学び始めました。
一つは、「お金の盾」です。 資産形成を地道に続けることで、「もし会社を辞めても、数年間は生活できる」という心のゆとりを手に入れました。お金は、僕にとって「自由のチケット」であり、「心の盾」でした。
もう一つは、「スキルの鎧」です。 資格取得に励むことで、「もしこの会社を辞めても、新しい場所で働ける」という自信を得ました。これは、自分を守るための、目には見えない強固な鎧でした。
そして、これらの「心の装備」が整った時、僕は初めて心の底から「安心」を感じ、転職という大きな決断を下すことができたのです。
3. 僕がたどり着いた、「やりがい」と「安心」の新しい関係
僕は今、地方の製造系大企業で働いています。以前の会社のような華やかさや、目まぐるしい変化はありません。
でも、僕はそれでいいと思っています。
毎日定時に帰り、家族と過ごすかけがえのない時間。育休中に始めたブログを書く時間。読書や勉強に没頭する時間。
心穏やかに過ごせるようになった今、僕はこれらの日々の営みの中に、ささやかだけれど、確かな「やりがい」を見出せるようになりました。
「やりがい」は、会社から与えられるものではなく、自分自身で見つけるものだったのです。
そして、その「やりがい」を見つけるためには、まず「心」が満たされ、安定している必要がある。
つまり、僕がたどり着いた「新しい働き方」とは、「やりがい」を最優先にするのではなく、まず「安心」を土台に置くこと。そして、その安心の上で、無理のない範囲で「やりがい」を探していくことでした。
おわりに:あなたの「心の安心」は、どこにありますか?
かつて、僕は「やりがい」を追い求めて燃え尽きてしまいました。
しかし、今は「安心」を最優先にすることで、心穏やかな日々を送れています。
もし、今あなたが仕事で辛い思いをしているなら、一度立ち止まって、自分の心に問いかけてみてください。
「本当に大切なのは、心が安心できることじゃないか?」と。
そして、僕がそうだったように、あなたも「お金」や「スキル」を味方につけて、自分だけの「心の安心」を見つけてください。
その旅は、決して無駄にはなりません。なぜなら、その旅路こそが、あなたの人生を真に豊かにする、新しい働き方の第一歩となるのですから。
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