「投資とか、怖いから何もしてないです」
そう言う人、実はたくさんいます。かつての僕も、まさにそのひとりでした。投資には漠然とした不安があり、リスクを取ることへの抵抗感が強かったのです。しかし、これまでのキャリアを振り返り、さまざまな経験を積んできた今、こう思うようになりました。
“何もしない”って、実は一番リスキーなんじゃないか?
日本円、それは国産の全力投資先:あなたは「円」にフルベット中
少し考えてみてください。あなたの財布に入っているお金。銀行口座に預けている預金。もしかしたらタンスの奥に眠っている現金もあるかもしれません。これらはすべて、日本円ですよね。
つまりあなたは、意識しているか否かにかかわらず、“日本円”という一つの資産クラスに100%投資している状態なのです。
あれ、それって……もしかして、かなり攻めた投資をしていませんか?
- 為替リスク? 円安が進めば、海外からの輸入品は高くなり、私たちの購買力は低下します。これはまさに今、私たちが直面している現実です。
- インフレ? 物価は確実に上昇しています。同じ1万円でも、買えるものがどんどん減っています。これは、実質的な資産の価値が目減りしていることを意味します。
- 金利? 長らくゼロ金利政策が続き、マイナス金利時代さえありました。預貯金だけでは、ほとんど増えません。
- 国の借金? テレビや新聞で報じられる国の借金問題は、見て見ぬふりをしているかもしれませんが、規模は相当なものです。
これらのリスクがあるにもかかわらず、あなたは「日本円」という一点に、資産のすべてをフルベットしているのです。その潔さには、ある種の漢気すら感じます。
ボーナス、それは“偏り”をリセットするチャンス
さて、この季節がやってきましたね。そう、夏のボーナスです。手取りで数十万円。人によっては百万円を超えるかもしれません。まとまった額のお金が入ってくるこの機会。
そのお金、どうしますか?
- ほとんどの人が、貯金(=さらに日本円に追い銭)
- あるいは、円建ての保険(=日本円をさらに長期でロック)
- 中には、自分へのご褒美に使う人もいるでしょう(これはいいと思います。心のインデックス投資ですね)
…しかし、結局、その使い道のほとんどは「円」に留まっていませんか?


「分散」って、知ってるけどしていない人たち
投資の世界では、「分散投資が大事」とよく言われます。リスクを減らし、安定したリターンを目指すための基本中の基本です。
そう頭では理解しつつも、なぜか自分の資産は「日本円」に全集中している人が、多すぎるように感じます。それは、投資に対する漠然とした「怖さ」や「面倒くささ」が原因かもしれません。
でも、少しでもいい。
- 全世界株のインデックスファンドに少額でも積み立ててみる。
- 米ドル建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)のような、手軽に外貨建て資産を持てるものに触れてみる。
- あるいは、金やコモディティなど、別の価値基準を持つ資産を少しだけポートフォリオに加えてみる。
そういった“別の軸”にお金を置いてみると、これまでとは全く異なる世界が見えてきます。僕自身も最初は怖くて、投資に踏み出すまでには時間がかかりました。しかし今では、円以外の場所にもお金があることで、日本という一国の経済状況や為替の浮き沈みに、いちいち一喜一憂しなくて済むようになりました。それは、想像していたよりもずっと、心がラクになる感覚です。
「動かない=安定」ではない:じっとしている間の“価値の低下”に気づく
日本円は、もちろん信頼できる通貨です。私たちの生活の基盤であり、その安定性は世界的に見ても高い水準にあると言えるでしょう。
しかし、「とりあえず動かさない=安定している」という考え方は、現代においては必ずしも正しくありません。むしろ、じっとしている間に、インフレによってジワジワと円の価値が下がっていく可能性だってあるのです。これは、ここ10年間の物価や為替のニュースを見ていれば、明らかですよね。
だからこそ、大きなリスクを取る必要はありません。せめて、今回のボーナスの1割だけでもいい。ほんの少し、違う場所に、ちょっとだけ投資してみる。それだけで、未来に向けた選択肢は大きく広がり、あなたの資産を守り、育てる第一歩となるはずです。
まとめ──あなたの資産、ぜんぶ“円”でいいですか?
「投資?何もしてないですよ」と軽やかに言うたびに、僕は心のどこかでこう思うようになりました。
「ああ、それって、日本円にオールインしてるってことですね」と。
もちろん、それでも構いません。個人の資産運用は自由であり、最終的な判断はあなた自身にあります。しかし、“何もしない”という選択が、実は「最大の一点集中投資」であるという事実に、どうか気づいていてほしいのです。
そのリスクを理解した上で、あえて「日本円にフルベットする」と決めるのであれば、それはそれで潔く、ある意味カッコいい選択かもしれません。ですが、その事実を知らずに「何もしない」を選んでいるのであれば、この夏のボーナスを機に、ほんの少しだけ、これからの資産について考えてみてはいかがでしょうか。
この夏のボーナス。あなたは、どこに“投資”しますか?


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