【資産形成】僕は従業員で、投資家でもある——2つの側面が生むメンタル安定術

キャリア

突然ですが、「キャッシュフロークワドラント」という言葉を聞いたことはありますか? あのロバート・キヨサキ氏のベストセラー『金持ち父さん 貧乏父さん』で有名になった、お金の稼ぎ方を4つのタイプに分類したものです。

  • E(Employee):従業員
  • S(Self-employed / Specialist):自営業・専門家
  • B(Business Owner):ビジネスオーナー
  • I(Investor):投資家

たいていの人はE(従業員)からキャリアをスタートさせますし、僕もまさにそのルートを歩んできました。しかし、このクワドラントの概念を知り、自分の中に「E」以外の側面を持つことの重要性に気づいてから、僕の会社との付き合い方、そしてメンタルは劇的に変化しました。

この記事では、僕がなぜ「従業員」という一つの顔だけでなく、「投資家」というもう一つの顔を持つに至ったのか、そしてそれが僕のメンタルにどのような安定をもたらしてくれたのかを、実体験を交えながら深掘りしていきます。

「E(従業員)100%」は不安の温床:会社依存がもたらす心の重荷

社会に出て、会社に就職し、働いて給料をもらう。これは、多くの人にとってごく自然なキャリアのスタート地点です。僕もそうでした。しかし、数年が経ち、ある事実に気づきました。それは──「収入源が会社だけ」という状態は、実はとてつもなく大きなリスクを抱えている、ということです。

まるで、一本の細い綱の上を歩いているような感覚でした。

  • 上司ガチャに外れたら、日々の業務が地獄になる。
  • 担当プロジェクトが潰れたら、自分の評価や居場所が危うくなる。
  • 体調を崩して働けなくなったら、収入が途絶え、生活が立ち行かなくなる。

こんな“出口のない状態”は、想像以上に人を追い詰めます。会社にすべてを依存していると、些細なことにも過剰に反応してしまい、常に不安と隣り合わせで生きることになります。僕もかつては、会社での評価や人間関係に一喜一憂し、胃を痛める日々を送っていました。その頃は、自分の人生のハンドルを会社に預けてしまっているような感覚でしたね。 

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I(投資家)の側面を少し持ってみた:精神のセーフティネットとしての投資

そんな「E 100%」の不安から抜け出すために、僕が始めたのが「ちょっとだけ投資家になること」でした。もちろん、いきなり大金を投じるようなリスキーなことはしません。僕が選んだのは、多くの人にとって現実的で、かつ効果的な方法です。

  • 新NISA:非課税枠を最大限に活用し、将来の資産形成の柱としています。
  • 企業型DC(確定拠出年金):会社の制度を活用し、老後資金を着実に積み立てています。
  • インデックス投資:全世界株式(オルカン)を中心に、特定の銘柄に集中することなく、広く分散して投資しています。
  • 配当株ちょこっと:少額ですが、定期的に配当金が入ってくることで、投資の実感を得ています。

これらは、決して「一発逆転」を狙うようなギャンブルではありません。むしろ、僕の精神のセーフティネットとなるための、地道な積み重ねです。毎月コツコツと、自動で投資が実行される仕組みを構築することで、日々の値動きに一喜一憂することなく、心穏やかに資産を育てることができています。

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「自分には他の側面もある」という安心感:心の奥底に芽生えた「秘密の抜け道」

この「ちょっとだけ投資家になること」は、僕にとって金額の問題ではありませんでした。むしろ、意識の問題が大きかったのです。

  • 「俺は従業員100%だ…この会社を辞めたら終わりだ…」と、会社に人生を丸ごと預けていた頃は、常にしんどさを感じていました。
  • しかし、「いや、自分は投資家としての側面もある。複数の顔を持っているんだ」と思えるようになってからは、心がめちゃくちゃ楽になったんです。

この感覚は、まるで「秘密の抜け道」を知っているような安心感に近いかもしれません。目の前の道が塞がれても、別の道があることを知っている。その知識があるだけで、人は驚くほど冷静でいられます。自分の価値が、会社という一つの組織の評価に縛られることがなくなり、より広い視野で自分を捉えられるようになりました。

メンタルの出口戦略は「選択肢を持つこと」:人生のハンドルを自分で握る

人間が一番しんどいのは、出口のない不安に閉じ込められている状態です。しかし、たとえ実際にその出口を使うことがなくても、「出口がある」と思えるだけで、メンタルは劇的に変わります。

  • 「もしこの仕事がイヤになったら、辞めてもいいんだ」
  • 「万が一、働けなくなっても、積み上げてきた資産が少しはあるから大丈夫だ」
  • 「自分には、会社員以外の別の顔(スキルや経験)もある」

「あ、俺、こっちの扉からいつでも出られますんで」──そう思えるだけで、会社での理不尽なプレッシャーや、将来への漠然とした不安が、ぐっと軽くなるのです。これは、会社という組織に対して過剰な期待を抱かず、健全な距離感を保つことにも繋がります。

そして何より、自分の人生のハンドルを、会社や他人に預けるのではなく、ちゃんと自分で握っているという確かな実感が湧いてきます。この感覚こそが、僕のメンタルを支える最大の「出口戦略」であり、揺るぎない自信の源となっています。 

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キャッシュフロークワドラントに生きる意味:E(従業員)× I(投資家)の最適解

『金持ち父さん 貧乏父さん』では、最終的にB(ビジネスオーナー)やI(投資家)を目指すことが推奨されています。確かに、B(ビジネスオーナー)になれれば理想的かもしれません。しかし、いきなりそこへジャンプするのは、多くの人にとって非常にハードルが高いのが現実です。

だから僕はこう思っています。E(従業員)とI(投資家)の二つの側面を持つことこそが、サラリーマン人生を快適に、そして豊かにする最適解なのではないかと。

  • 働きながら資産を育てる:従業員として安定した収入を得ながら、その一部を投資に回し、資産を増やしていく。
  • 資産に支えられながら働く:増えた資産が心の余裕を生み、会社でのプレッシャーを軽減し、より自分らしく働くことを可能にする。

このポジティブなループがあるだけで、人生の「詰み感」が劇的に減ります。会社に依存しすぎず、かといって無謀な挑戦をするわけでもない。地に足をつけて、着実に人生を豊かにしていくための、非常に現実的な戦略だと考えています。

まとめ:側面を増やすと、心は軽くなる

「会社がすべて」だと思い込んでいた頃、僕は常にストレスを感じ、よく胃を痛めていました。しかし今は、「まあ最悪、株式市場で頑張ってもらおう」と、冗談交じりに思えるほどの心の余裕があります。

一人の人間が、複数のクワドラントを持っていい。いや、むしろ持つべきだと僕は考えています。自分の「役割ポートフォリオ」を分散していくこと。それが、僕にとっての最大のメンタル安定装置になっています。

だからこれからも僕は、従業員としての責任を果たしつつ、投資家としての側面も大切にしながら、この二つの顔を持つ人生を選び続けます。あなたの人生も、複数の側面を持つことで、きっともっと軽やかになるはずです。

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