【キャリア】FIREは目指さない。でも“逃げられる選択肢”が欲しい。

キャリア

現在、育児休業中の私にとって、赤ちゃんとの日々は喜びと発見に満ちています。会社のメールもSlackもほとんど見ない生活を送っているにもかかわらず、心のどこかで漠然とした焦りを感じている自分がいました。それは、育休が明け、会社に戻った後、自分のキャリアや働き方がどうなるのだろう、という未来への不安でした。

そんな中で私が出会ったのが、「窓際FIRE」という言葉でした。これは、私自身の働き方に対する潜在的な願望を、見事に言語化してくれたものでした。今日は、育休中の気づきを通じて、私が辿り着いたこの「窓際FIRE」という新しいスタンスについて、深く掘り下げてみたいと思います。

「辞めたいわけじゃないけど、“辞められる”ようにはしておきたい」──現実的な「逃げ道」の模索

「FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期リタイア)」という言葉は、巷でよく耳にするようになりました。しかし、正直なところ、私にとって「働かずに生きる」という完全なFIREは、まだ少し現実離れした、距離のある夢のように感じられます。

それよりも、私が求めているのは「働かなくてもいいという“逃げ道”を、常に手元に持っておきたい」という感覚に近いものでした。仕事への意欲が全くないわけではありません。しかし、もし何らかの理由で今の働き方が困難になった時や、別の道を模索したいと思った時に、経済的な制約によって選択肢を奪われたくない、という切実な思いがあるのです。

そんなモヤモヤとした思いを抱えていた時に、まさに目から鱗が落ちるように感じたのが「窓際FIRE」という言葉でした。これは、会社を完全に辞めることなく、責任やプレッシャーの少ないポジションで働き続けながら、経済的な自立を目指す考え方です。この言葉に出会った瞬間、「これだ! これこそが、私が求めていた働き方だ!」と、心の底から納得することができました。完全なリタイアではなく、緩やかな形で労働と生活のバランスを取る。この「ほどよい」状態が、私にとっての理想だったのです。

キャリアより「家庭の余白」に重心を置く日々──育休が教えてくれた価値観の転換

育休中の私の日常は、これまでとは全く異なるリズムで流れています。毎朝、赤ちゃんの小さな瞳と目が合い、離乳食を床に盛大にこぼされ、お昼寝の合間にそっと家計簿を開く。この、一見すると地味で単調な日々のループの中で、かつてキャリアに全力を投じていた私の姿は、少しずつ薄れていきました。

しかし、この変化が私にとって嫌なわけではありません。むしろ、この穏やかで愛おしい「家庭の余白」を維持するため、そして将来にわたってこの「心地よい暮らし」を守り続けるために、「もしもの時の逃げ場を作っておきたい」という強い動機が生まれました。その結果として、これまで以上に、お金の使い方や貯め方、そして増やし方を見直し、真剣に取り組むようになったのです。

この時期に、私の価値観は大きく転換しました。かつてはキャリアの成功や高い年収を追求することが第一義でしたが、今は家族との時間や、精神的なゆとりを確保することが、何よりも重要だと感じるようになりました。そして、その大切なものを守るための手段として、資産形成や働き方の見直しがあるのだと明確に認識できたのです。

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「増やすこと」より、“圧を減らす”ことが目的になった資産形成

私の投資や貯蓄は、かつては純粋に「資産を増やすこと」そのものが目的でした。しかし、育休を経て、その目的は少しだけ、しかし決定的に変化しました。

現在の私にとっての資産形成は、「働くことへの心理的な“圧”を減らすこと」が最大の目的です。

  • 会社での仕事に全身全霊を捧げなくても、生活していけるだけの基盤を築く。
  • もし理不尽な状況に直面したとしても、それに我慢し続ける必要はなく、別の選択肢をいつでも選べる状態にしておく。

これこそが、今の私にとっての真の「資産形成」なのです。資産を増やすことは、あくまでこの「圧を減らす」という目的を達成するための手段であり、それ自体がゴールではなくなりました。この視点の変化は、私に大きな心の自由を与えてくれています。

「辞められるけど、まだ辞めない」──「選ぶ自由」の価値

育休を終えて会社に戻れば、きっと以前と同じように、様々な業務や人間関係の課題に直面することでしょう。時には、ストレスを感じる場面もあるかもしれません。しかし、心の奥底に「もし本当に辛くなったら、辞めるという選択肢がある」という“逃げ道”があるだけで、精神的な余裕は劇的に変わるはずです。

「もうこの働き方では限界だ」と感じたその時、「では、私はここでお降りますね」と、穏やかに、しかし毅然として自分の意思を伝えられる準備だけはしておきたい。これは、「何もかもを諦める」ことではありません。むしろ、「自分の人生における本当に大切なもの(家庭、時間、心のゆとりなど)を何もあきらめずに済むように、一つ(キャリアへの過剰なコミット)を手放す」という、賢明で戦略的な選択なのかもしれないと考えています。

  • 👣 これは、一般的なFIREとは異なる、自分なりの「あそび」を持った働き方を追求したいという、静かなる決意です。
  • 👶 そして、この新たな働き方への価値観は、まさに育児中の今、赤ちゃんとの絆を深める中で、真剣に、そして深く考えることができたからこそ辿り着けた境地なのです。

最後に──「しがみつく」中に「耕す」自由

「無理に動きたくないわけじゃない。でも、今は無理に動かなくてもいいかな」──この穏やかな感覚こそが、今の私にとって一番の安心材料であると確信しています。

私は今、会社という大きなシステムに、ただ漫然と身を任せているわけではありません。しかし、かといって、あえて危険を冒して突き進むこともしていません。まるで、大木にそっと寄り添うように「しがみついて」いる。そして、その安定した足元で、自分自身の暮らしや人生という畑を、焦ることなく、しかし着実に、少しずつ「耕している」最中なのです。この、外から見れば地味かもしれない「中庸」の生き方こそが、私にとっての真の豊かさであり、幸福への道だと感じています。

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