前回の記事では、私が会社という組織の中で自分の居場所を見つけるために、いかに資格取得に力を注いできたか、その全体像をお話ししました。今回は、その具体的な背景やプロセスについて、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。どんな環境で、どのような考えを持ち、そして具体的にどうやってその目標を達成してきたのか。私の「居場所作り」の裏側を、余すことなくお伝えします。
やりたくない仕事、微妙な人間関係…でも、居場所は「戦略的」につくれる
正直なところ、社会人になってからというもの、「仕事が心から楽しいです!」とか「職場の仲間はみんな家族みたいに温かいです!」といった、絵に描いたような理想的な言葉を、私は一度も口にしたことがありません。むしろ、私にとっての会社生活は、あまり気乗りしない仕事と、どうにも苦手意識のある人間関係の狭間で、日々、自分の居場所をどうにかこうにか死守するという、ある意味で「戦略的なサバイバル」そのものでした。
そんな中で、私が導き出した生存戦略が、「資格取得による武装」だったのです。
異動のたびに、資格で「武装」していった僕の道
私の社会人人生は、まるで社内ITマラソンのようでした。ネットワークの部署からキャリアをスタートし、サーバー管理、そして最新のクラウド技術、さらには情報セキュリティといった、次々と異なるIT分野の部署を渡り歩いてきました。
そして、部署が変わるたびに、まず私が自分に課した目標は、常に決まっていました。 「この部署で必要とされる資格を、最短で取得してやる。」
これは、新しい部署での立ち位置を素早く確立し、「とりあえず、この人は仕事ができそうだ」という“すごそう感”を周囲にまとわせるための、僕なりの戦略でした。新しい環境に馴染むのが苦手な私にとって、資格は言葉以上に雄弁に自分の能力を証明してくれる、最強の「武器」だったのです。
「実務のあとに資格」なんて悠長なことは言ってられなかった
一般的に、資格取得のアドバイスとしては、「まずは実務経験を積んで、業務内容を深く理解してから、その知識を体系化するために資格を取るのが良い」という声が多く聞かれます。それが、理にかなった順序だということは、私にも理解できます。
しかし、当時の私は、そんな悠長なことを言っている場合ではありませんでした。 「そんな回りくどいこと、やってる暇はない。」
専門用語の意味もろくに分からないまま、教科書や参考書をひたすら暗記し、時には徹夜で勉強に没頭しました。とにかく、「資格をいち早く取得し、そこに自分が存在していい『明確な理由』を作り出すこと」が、私にとっての最優先ミッションだったのです。
特に、過去に経験したパワハラの後遺症(?)もあり、会社の中で「自分の居場所」が明確に確立されるまでは、毎日が精神的な綱渡り状態でした。資格という確固たる証明は、私のメンタルを安定させ、安心して仕事に取り組むための、何よりも重要な土台となってくれたのです。



資格勉強は、僕にとって「心安らぐ趣味」だった?!
意外に思われるかもしれませんが、私にとっての資格勉強は、決して苦痛なものではありませんでした。むしろ、心地よい趣味のような感覚で取り組むことができました。
それは、私が大学受験時代に培った、「合格するための最短勉強法」が、資格取得においても大いに活きたからです。高校中退から大学受験という、常識を覆すような挑戦の中で叩き込んだ学習効率の極意が、ここでも遺憾なく発揮されました。大学生活でも、私は勉強自体を「まるでスポーツか?」と表現するほど楽しんでいましたから、資格取得もその延長線上にある、精神的な「運動」のようなものだったのかもしれません。
世の中には、体を動かす筋トレでストレスを発散する人もいれば、私のように、難解なシラバスや技術書を読み込み、知識を体系化することでストレスを発散する人間もいるのです。これは、僕にとっての「ストレス発散法」であり、同時に「自己肯定感を高める時間」でもありました。
積み上げた「紙の実績」が、静かに評価されはじめる
そんな地道な努力を積み重ね、気づけば社会人15年目に突入していました。そして、私の業務領域に関連する、世間的に「高難度」と呼ばれる資格を、20個以上も取得していました。主なものだけでも、以下のようなラインナップです。
- AWS SAP(Solutions Architect Professional)
- AWS DOP(DevOps Engineer Professional)
- CISSP(国際的な情報セキュリティ資格)
- PMP(プロジェクトマネジメントの王様)
- LPIC-3(Linux界の最上級)
- ネットワークスペシャリスト(高度情報処理試験)
- 情報処理安全確保支援士
- CISA(Certified Information Systems Auditor)
- CISM(Certified Information Security Manager)
- などなど
さらに、入社当初はTOEICのスコアが400点台という、正直言ってポンコツレベルだったのですが、今では800点台にまで向上させることができました。これは、国際的な情報や技術をキャッチアップする上でも、大きな自信となっています。


これらの「紙の証明書」は、最初は私自身の精神安定剤のような役割でしたが、時間を経るごとに、周囲からの評価へと静かに、しかし確実に繋がっていきました。直接的に「すごいね!」と言われることは少なくても、難易度の高い資格を複数持つことで、組織内での私の専門性に対する信頼感は着実に増していったのです。
僕の居場所は、まさしく「紙の証明書」の上にある
日系の大企業という環境では、往々にして年次や部署の肩書で語られることが多く、「実務なんて、誰がやっても大差ない」といった、ある意味で諦めにも似た空気が漂っていることも正直あります。
しかし、そんな組織の評価軸の中で、私は「資格」という、誰の目にも明らかな客観的な指標を使って、自分自身の存在意義をじわじわと、しかし確実に確保してきました。それは、まるで積み重ねた資格の束の上に、自分だけの安定した足場を作り上げたかのような感覚です。この「紙の証明書」こそが、私の会社での確固たる居場所を形成してくれたのです。
地味でも、自分だけの「居場所」はつくれる
私は、出世レースで誰よりも前を走りたい、と燃えるタイプではありません。華やかなプレゼンテーションで、大勢の聴衆から喝采を浴びることに喜びを感じるわけでもありません。また、複雑な社内政治に長けているわけでもない。
しかし、そんな私でも、自分にできること──つまり、地道に知識を吸収し、資格として形に残すこと──を通じて、確実に自分の「場所」を作り上げてきました。それは、決して派手な戦い方ではないかもしれません。でも、自分自身の強みを活かし、着実に、そして地道に努力を続けることで、組織の中で自分なりの価値を見出し、居場所を確保することだって、立派な社会人の戦い方だと私は思っています。
最後に──「資格でじわじわ派」という選択肢
もしこの記事を読んでくださっている方の中に、「職場に馴染めない」「自分の居場所がどこにあるか分からない」といった悩みを抱えている方がいれば、私のような「資格でじわじわと居場所を築いていく」という選択肢もあることを伝えたいです。
それは、一見地味に見えるかもしれませんが、着実で、誰にも奪われることのない、あなた自身の「無形資産」を築く方法です。そして、その積み重ねが、いつかあなたの心に確かな安心感と自信をもたらしてくれるはずです。
次回は、そんな私がどんな風に「休みの日」を過ごしているかについて語ってみたいと思います。資格取得と仕事の毎日だけでは、心も体もオーバーヒートしてしまいますからね。私なりのリフレッシュ術や、オフの日の過ごし方をお話しできればと思います。読んでいただき、ありがとうございました。



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